マチって、なんで端っこが余るんでしょうね。
計算上は合っているはずなのに、カーブと直線を合わせた瞬間に「ん?なんか端っこが余る…」という、あの独特の裏切られ感。
レザークラフトをしていると、一度は出会う“マチの不思議”。
今回はその正体を探るべく、
①外形の長さを合わせた型紙と
②縫い代(縫い線)の長さを合わせた型紙
この2つを作って、どちらが気持ちよく仕上がるのか比べてみました。

今回の題材は、横12cm × 縦8cm。2歳の子が持つ、小さなミニバッグ。
このサイズでも、2つの型紙でマチの長さが約17.6mmも違うんです。
たった17.6mm。でも、仕上がりはまるで別物。
さて、この差がどんな景色をつくるのか。
そのあたりを、ゆっくり見ていきましょう。
今回の実験台になってもらったのは、2歳の子どもが初めて持つショルダーバッグ。
2歳半の息子に作ってみたら、週末のお散歩にお気に入りのお菓子やおもちゃを詰め込んで歩くようになりました。

小さな身体に小さなバッグ。なんだか、それだけでちょっとした“はじまりの道具”みたいです。
普段は、本体とマチを接着してから穴をあける方が多いと思いますが、今回はあえて最初から穴を開けておき、縫いながら貼り合わせていく方法を選びました。
ちょっと手間は増えますが、その分“違い”が見えやすいんです。
結論:綺麗に仕上げたいなら「縫い代」を合わせる
先に結論だけ言うと、工夫すればどちらの方法でも作れます。
でも、圧倒的に形が綺麗に見えるのは「②縫い代の長さを合わせた型紙」でした。
「細かい説明はいいから、答えだけ欲しい」という方は、
縫い代(穴の位置)の長さを合わせて型紙を作り、マチにスリット(切り込み)を入れる。
これだけ覚えておけば大丈夫。
たったそれだけで、仕上がりが驚くほど整います。
理由を知りたい方は、もう少しだけお付き合いください。
僕はもともと自動車部品の設計をしていたので、型紙づくりもCADでやっています。
「立体になるんだから、外形を合わせるのが正解でしょ?」
そう思うのは自然ですし、手描きで図面を作るならまず外形線を引きますよね。
例えば、本体の外周に合わせてマチの長さを決め、そこから4mm内側にオフセット(赤い線)を引くとします。
中心から均等に5mmピッチで穴をあけると(緑の点)、この図面では穴の数は51個。

次に本体側も同じように4mm内側に線を引き、5mmピッチで穴を描くと…49個。
「え、さっきと数が違う?」となります。

理由はシンプルで、
直線と曲線では、内側にオフセットしたときの長さが変わってしまうから。
穴の数だけを合わせて無理やり縫ってみると、写真のようになります。

左上から縫い始めたのですが、V字の切り込みが右に行くにつれてズレていく。
両端は合っているのに、曲線部分だけしわ寄せが出てしまう。
革のしわ寄せを切り込みで吸収しきれず、波打つ。
正面から見ると、力を逃がそうとしてマチが外に膨らんでしまう。
曲線が“無理して曲がっている”感じが出てしまうんです。

次に、縫い代(4mm内側のライン)の長さを同じにして図面を修正しました。
これなら、どちらも5mmピッチで同じ穴の数になります。

すると今度は、外形の長さに差が出てきます。
下の写真では、作品の右半分がスリットなし、左半分がスリットあり。


スリットがない方は少し波打ちますが、スリットを入れた方は本体の曲線にピタッと沿う。
仕上がりのラインが、明らかに綺麗なんです。

表から見ても、こちらの方が自然で、無理がない。
今の僕としては、
「縫い代の長さを合わせて、外形差はスリットで調整する」
これが一番しっくりくるやり方だと思っています。
「CADなんて使えないよ」という方も心配いりません。本体のオフセット線(縫い線)に“紐”をセロテープで固定して、その紐の長さを測る。ただそれだけで、マチの長さをかなり正確に決められます。アナログでも、十分に綺麗に作れるんです。
