作品のクオリティは“手先”ではなく“図面”で決まる

なぜ、図面が正確だと、レザー作品のクオリティが一気に上がるのか?
これは自動車づくりと同じで、仕様を決めて、図面に細かな指示を落とし込み、それを後工程がその通りに仕上げることで、100分の1、1000分の1ミリの精度が生まれます。それを組み合わせていくと、安全で、かっこよくて、信頼できる“もの”になる。

もちろん、
「相手のことを想いながらつくる」
「ひとつひとつ丁寧にやる」
これは大前提です。

でも、想いだけで作ったものを“今よりもっと良くする”ためには、図面(型紙)にできるだけ落とし込み、その通りにつくること。これが品質を安定させる一番の近道です。久しぶりに作ると工程を忘れたり、クオリティが安定しなかったり。図面は“記憶”ではなく“仕組み”として工程を残せるのでとても大切なものです。


想いだけで作っていた頃の話

当時はこれを周りの人に渡して、みんな喜んでくれていました。でも今思うと「本当に喜んでくれていたのか…?」と少し怖くなる。

はじめてレザークラフト作品


自動車部品の設計経験を活かして、それから少しずつ図面をしっかり作るようになり、気づけは10年が経っていました。
図面に長く触れると、作品や図面を見るだけでその人の設計思想が見えてくるようになります。

「多分こう作ってるんだろうな」
「自分ならこうする」

それが分かるようになると、ものづくりは更に楽しくなります。

参考として名刺入れの型紙を載せています

今はこの様な図面を描いています。ものづくりの最初の仕事は、やっぱり「設計」です。

いきなり図面は描けない

すごい人は頭の中に図面が浮かぶのかもしれませんが、自分は長年やっていても、いきなりは図面を描くことは少ないです。作るまでの手順はいつも同じです。

イメージづくり(仕様を決める)

ラフ図面作成
試作
図面修正

試作と修正を4回ほど回すと、かなり納得のいくものになります。

イメージづくり

まずは「とりあえず作ってみる」

頭の中だけでは絶対に見えない問題が、実際に作ると出てきます。革がもったいない場合は、端革や床面の革でOK。ただし曲げがある作品は、革の硬さが違うと曲線が変わるので、できれば本番と同じ革がベストです。

今回は、一眼レフ用ハンドストラップPeak Design「Clutch」のカバーを例に説明します。独特な形なので、寸法を測って図面にするのは大変。

まずは
「どう固定するか」
「何を取り付けるか」を考えます。

上下を挟み、中央にベルト穴を開ける構造が良さそうだったので、外形を革に転写し、一回り大きく切り出します。

さらに上下の挟み込みパーツも作り、実際に縫って確認。

この段階で、
「外形+膨らみ分+接着面」で型紙の寸法が決まります。

同時に取り付けたいもの(今回はレンズキャップ)も検討します。

実際に作ったイメージがこちらです。

トレースはIllustrator

試作ができたら写真を撮り、Illustratorでトレースします。

手で作った曲線を忠実に拾いたいので、まずはIllustrator経由。

自動車関連に携わっていたころ、手で描いた曲線が一番美しいみたいな話をどこかで聞いてから自由曲線が多い形は現物を作ってIllustratorでトレースするようになりました。

その後、CADで読み込める形式に変換します。

このこだわり、ちょっと分からん…という方は、この工程は飛ばして大丈夫です。

最終図面はAutoCAD


「AutoCADじゃないとダメ?」

そんなことはありません。
自分に合うCADでOKです。

ここでやるのは、

・Illustratorデータの尺度調整

・外形ラインを整える

・各パーツの図面化
・必要な指示の書き込み

指示としては、以下の項目を記載します。

・コバ仕上げ範囲

・革の種類・厚み
・接着箇所

・縫いライン・穴位置

型紙を使って試作する

実際に作ってみると、改善点が必ず見つかります。今回の例では、中央の穴が左に3mmズレていました。

この“ズレ”を潰していくのが設計の醍醐味です。

レンズキャップの取り付け方法も試作1回目はボタンでしたが、デザインを損なうためDカンに変更しました。

ボダンだと、レンズキャップを取り付けない場合、“何か忘れた感”が出るので、取り付けない場合でもデザイン性が良くなるような構造に見直しました。

完成した型紙で作ると…

試作を重ねると完成度が上がることを知ってもらえたのではないかと思います。一度型紙ができると、2回目以降も同じクオリティで作れます。

だからこそ、僕は初心者でも一定の品質で作れるように設計図に細かな指示を加えています。

週末に誰かのためにひとつ作って、喜んでもらえる。そんな体験を、ぜひ味わってほしいと思います。

設計の視点で「失敗しない型紙」を開発中


図面だけで作れるように細かな指示を入れつつ、設計の意図や厚みの考え方は有料noteで丁寧に解説しています。
仕立ての背景まで知ると、作る時間がもっと楽しくなります。

型紙ページ

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