前回の記事では、CADを使うとレザークラフトの型紙作りが変わる3つのことをお伝えしました。
今回はいよいよ実践編です。
「実際にどうやって使うの?」という疑問に答えるために、アイデアが生まれてから完成品ができあがるまでの全体の流れを5つのステップで紹介します。
前回の記事はこちら
難しい操作の話は今回はしません。「CADを使うとものづくりの流れがこう変わる」という全体像を掴んでもらえれば十分です。
まず最初にやることは、作りたいものを言葉と数字で整理することです。
「なんとなくこんな感じ」という頭の中のイメージを、できるだけ具体的にしていきます。
整理する内容はこの4つ。
- 何を作るか(例:パスケース、キーホルダー、財布)
- 誰が使うか(自分用、プレゼント、販売用)
- サイズ感(カードが何枚入るか、ポケットに入るサイズか)
- デザインのイメージ(シンプル、曲線多め、ステッチのラインなど)
この段階ではまだ紙とペンで十分です。
殴り書きでも、箇条書きでも大丈夫です。頭の中にあるものを外に出すことが目的なので、きれいに書く必要はまったくありません。
僕もレザークラフト始めたてのころは「とりあえず〇〇作りたい!」から始めていましたが、この4つを意識するようになってから、渡した相手が喜んでくれる確率が上がりました。CADは「形を作るツール」です。何を作るかが決まっていないと、CADを開いても手が止まります。ここを丁寧にやっておくほど、この後の工程がスムーズになります。
作りたいものが決まったら、いきなりCADは開きません。
まず床革を使って、ラフに形を作ってみます。
床革とは革の裏側を薄くスライスした端材のことで、安価で手に入るため試作に最適です。定規と革包丁で大まかにパーツを切り出して、簡単に組み立ててみます。
ここでは進んで失敗しましょう!
この段階で失敗しておくことで、次のCADで描く図面の完成度が一気に上がります。頭の中のイメージと実物のギャップがここで見えてくるからです。
特に「革の厚み」です。
CADで作る時にこれを織り込んでいないと、組み立てたときに思ったより寸法が小さくなって、入れたいものが入らない!ということが起きたりします。
ただ、床革と実際に使う革とでも硬さや繊維の伸びなどが異なるため、試作のどこかで一度本番で使う革を使って作ることをおすすめします。
組み立ててみて「だいたいこの形でいける」となったら、パーツを一度ばらして寸法を測ります。この数字がCADに入力する元データになります。
いよいよここからCADの登場です。
ばらしたパーツの寸法を測ったら、いよいよCADで型紙図面を描いていきます。
さまざまなコマンドを組み合わせて、ばらしたパーツを描いていきます。直線一つでも、2点を選んだり、1点と距離を指定したり、角度を決めて描いたりと、細かくコントロールできます。(それぞれのコマンドについては別の記事で詳しく説明します)
CADの良いところはすべての形状を描かなくても左右対称のものは中心線から半分だけ描いて対称にします。便利な機能がたくさんあるため、コマンドを覚えるほど図面を描くための時間が削減できます。
もし2つのデザインで悩んでいたら、両方とも同じ図面上に描きましょう。
どちらも描いて印刷する。それで試作を作ってみて決めればいい。
この段階ではまだ完璧に仕上げる必要はありません。「だいたいこの形」が決まればOKです。細かい修正はSTEP5でやります。
ここで作ったCADデータが、この後の試作のたびに育っていきます。
CADで「だいたいこの形」が決まったら、図面を印刷します。
印刷した紙を厚紙に貼り付けてカッターで切り出せば、型紙の完成です。切り出した型紙をSTEP2のラフと見比べて、形が違う部分があればこの時点でCADに戻って修正します。
型紙が決まったらSTEP2と同じように革を切り出して組み立ててみます。
ただしここで使う革はSTEP2の床革ではなく、本番に近い革を使うことをおすすめします。
STEP2でもお伝えした通り、床革と本番の革では硬さや繊維の伸びが異なります。この段階で一度本番素材に近いもので確認しておくことで、最終試作でのズレを防ぐことができます。
組み立ててみて気になる部分をメモしておきます。
- ここの曲線がもう少し緩やかな方がいい
- このパーツが思ったより大きい
- ステッチのラインをもう少し内側にしたい
このメモは直接型紙に書いておくことで修正もれがなくなります。
完璧に仕上げる必要はありません。「修正したい部分を見つけること」がこのステップの目的です。
見つかった修正点はSTEP5でCADに反映します。
STEP4で見つかった修正点をCADに反映します。
型紙に書いたメモを見ながら、数字や線を修正していきます。「この曲線の基点を2mm外側に動かす」「このパーツの幅を5mm広げる」といった調整が、数分で完了します。
手描きの型紙なら修正のたびに書き直しが必要でしたが、CADの場合、線をオフセットしたり、数字で形を変更することができるので、1から型紙を作り直す作業が無くなります。
前回の記事でお伝えした「手描きの時間の削減」が、ここで一番実感できます。
修正が終わったら再び印刷して型紙を作り、また試作します。
STEP4→STEP5を繰り返すことで、型紙の精度が上がっていきます。
僕の場合はこのループをおよそ4回繰り返します。例えばバッグのマチであれば、形状を複製して少しずつ変えたものを同じ図面上に並べて、どれがベストか検証しながら進めます。
「もうこれ以上直すところがない」と感じたら完成です。最後に本番の革で仕上げの試作を作って、問題がなければ完成品として残します。
そしてこのCADデータは、そのまま資産として保存されます。1年後も、3年後も、同じ精度で型紙を出力できます。
今回はCADを使ったレザークラフトの型紙作り、全体の流れを5つのステップで紹介しました。
- STEP1:作りたいものを言葉と数字で整理する
- STEP2:床革でラフを作って形を確認する
- STEP3:ラフの寸法を測ってCADで図面を描く
- STEP4:印刷して仮試作を作り、修正点を見つける
- STEP5:CADを修正して試作を繰り返す
CADは難しいツールではありません。型紙作りの精度を上げて、手を動かす時間を増やすための相棒です。
次回はCADの種類と金額感について紹介します。インスタのアンケートでも「金額感が知りたい」という声をいただいていたので、実際に使っている目線でお伝えします。
CADについて気になることがあれば、インスタのDMにお気軽にどうぞ。
僕がCADで作成した型紙は、こちらからご購入いただけます。
「本当に自分にも作れるかな…」と不安な方でも、
手順通りに進めるだけで、ちゃんと形になるように設計しています。
ぜひ、“自分にも作れた”という達成感を味わってみてください。

